鼻中隔延長術における過剰な肋軟骨移植について

術中の画像があります。苦手な方はご注意ください。鼻と移植片の位置関係を示すために鼻の上に全摘した移植片を配置しています。

2018年頃から海外で広がっていた過剰な軟骨移植が今は日本の一部のクリニックでも行われています。

顔に複数の細長い器具が配置されている画像

私はいろいろなクリニックの修正手術を経験してきていますが、これほどまでに大量の軟骨を詰め込まなければならないか、いつも疑問を感じています。もっと少なくても十分美しい鼻中隔延長をつくるクリニックはあります。

ここまで多量の肋軟骨を移植する方法については一度立ち止まって考えなければならないのではないか

と私は考えています。なぜなら、ここまでつくり込まなくても少ない移植片で25mm未満の長さで十分に美しい変化を出しているクリニックは沢山あるからです。

多くのケースで

「こんなに詰め込まれているとは知らなかった」

「ずっと痛かった、こんなに入っているとは・・」

「全摘したらこんなリスクが高くなるとは・・」

とみなさん強いショックを受けられます。全摘すれば、これだけ入っていると当然元の鼻の形のダメージは大きく悪化しています。

執刀医は全ての鼻の手術に修正リスクがあることは当然理解していると思いますが、知っていてここまで詰め込んでいるのであれば執刀医の自己満足ではないかとさえ思えてきます。自分の家族にこれができるでしょうか。

ここまで入れて、さらに猫手術、貴族手術と、たいてい詰め込み方が尋常ではありません。一体どれだけの軟骨を採取して手術を行なっているのか、鼻の手術で使用する軟骨は無尽蔵に人間の身体にあるわけではありません。使えるだけ使えば、修正の手段が狭まります。

鼻の修正手術を多く手がける医師として、はっきり言います

この方法の鼻中隔延長術は廃れた方が良い、もっと少ない材料で効果をあげる方法を考案すべきです。

そして、患者さんたちも、SNSで派手な症例に踊らされるのではなく、変化量の多さと、あなたの鼻が抱える負担と、修正リスクは全て確実に比例することを理解してください。

全摘出後の変形リスクについての説明図。鼻中隔延長や複合手術に関するリスクを示すグラフが含まれる。

軟骨を沢山用意してきれいな鼻を作って良いと患者さんに言われれば、美容外科医ならほとんどの医師が工作のように派手な鼻を作ることができます。でも、なぜ多くの美容外科医がそれをしないのか、そこを考えてください。

長年美容外科を見ていると、確かに海外で新しい技術が広がることはありますが、海外でやっているから最先端、海外でやっているから正しい、ということは必ずしもありません。海外の方法をやみくもに崇拝するのではなく、それを一つの方法として冷静に受け止め、さらにどうすれば患者さんに最小限の負担で最大限の結果を出せる手術になるのかを考えていく必要があります。

執筆:

銀座すみれの花クリニック

院長横山才也

日本専門医機構認定形成外科専門医

日本美容外科学会(JSAPS)認定美容外科専門医

修正 修正手術 全摘 感染 手術 美容外科 銀座すみれの花クリニック 鼻の修正手術 鼻の整形 鼻中隔延長

聞いていない手術をされていたら

ー2020年4月19日のブログ記事を移行しましたー

「全く聞いていない手術をされていた」

という方がいます。泣き寝入りしないでください。

韓国ではしばしばあることで、患者様の反応も様々です。「無料で綺麗にしてもらったならOK」という方もいれば、「勝手にされたことは許せない」という方もいます。

実は日本の美容外科でもたまに同様のご相談があります。韓国だけの話ではありません。この記事では日本の美容外科で発生した場合の対処法についてご紹介します。

クリニックにとってもリスクが高い

勝手な手術をされた場合、それが公になればクリニックにとっても大ダメージとなり、患者様がXなどに投稿したら一発でクリニックの信用が失墜、炎上、ずっとネガティブイメージがついて回ることになります。医師も美容外科医としてのキャリアに大きな傷がつきます。

それでも医師が「説明していない手術をしてしまった」のは以下の可能性があります。

・術中判断で必要と判断して行った(術中判断について事前説明、同意していれば問題なし)

・患者を取り違えて間違った手術を行った

・医師の勘違い

・SNS向けの症例を作るためにあえてやった

・患者をきれいにしてあげたかった、サービス(韓国のクリニックでありがちな理由)

泣き寝入りをする必要はない

勝手なことをされた場合は、泣き寝入りする必要はありません。たとえモニター無料手術であってもインフルエンサー案件であってもです。まずは一度クレームをいれましょう。

近年はInstagramの映えを狙って、過剰な手術をするクリニックが増加しています。患者様をPRの道具だと考えて黙って派手な手術を行います。

一度も説明されていない手術をされた、希望していない手術をされた場合、たとえ手術後に同意書のサインを強引にさせられたとしても、無料手術であったとしても、

泣き寝入りはしないでください。

患者様が行うべきこと

本当に聞いていない手術だったのか、しっかりと確認を進めます。聞いていたのにすっかり忘れていた、「先生に全部お任せします!」「きれいにしてください!」と言っていた、後で書類を見たら説明を受けていた、ということもよくあります。本当に勝手にされてしまったのか、術前のやり取りや同意書などで確認をしましょう。

カルテ一式を確保

診療録だけでなく、手術までのデータ等全てを請求(カルテ開示)します。カルテ開示の請求を受けたら開示するのは医療機関の「義務」、請求は患者の権利です。*患者様に費用負担が発生します。

予定されていた手術と実際に行われた手術を一覧にする

一覧にしましょう。自分の主張が本当に正しいのか確認にもなりますし、誰かに相談するときに伝わりやすいです。

記憶をメモしておく

記憶があるうちに起こったことの詳細をメモしておきます。もし手術のあとに新たな同意書に署名させられたとしたら、そのことも記録に残します。患者様の勘違い、誤解、ということもあり得ます。まずは冷静にメモしましょう。

誰かに相談する

親、配偶者、友達など、身近な方にも相談しましょう。他院で相談するのも一つの方法です。弁護士に相談するのは聞いていない手術を勝手にされたことが確実になってからです。

SNSの投稿を交渉材料にはしない

勝手な手術が事実であれば口コミで公開して糾弾したくなる方もいるかと思いますが、先に特定できる口コミをばら撒いてしまうと話し合いが不利になることがあります。

無料モニター、割引モニターは関係ない

手術代金が無料か割引か正規料金かは全く関係ありません。同意していない手術を身体に加えたことは料金とは全く別問題となります。

他のクリニックに相談に行って記録を残してもらう

本当に聞いていない手術が行われているのか、他院の医師に医学的に確認してもらい、カルテに記録してもらいましょう。

自分が受けたクリニックがどのようなクリニックなのかネットで確認

過去に裁判を起こされているクリニックであれば、ダメージを最小限にするために早々に示談で解決を図るか、逆にクレーム慣れしていて相手にしないか、のどちらかです。「クリニック名」「裁判」「失敗」などで検索してみましょう。手術を受ける前とは違った景色が見えてくる可能性があります。

おわりに

麻酔から目覚めたら聞いていない手術をされていた、ガーゼを外したら聞いていない手術のあとがあった、他院に相談に行き画像検査したら聞いていない手術をされたことが明らかになった・・患者様が気付くタイミングは人それぞれです。

聞いていない手術は医療ではあってはならないことです。たとえ自費診療の美容外科であっても同じです。泣き寝入りせず、まずは証拠を確保して、医療事件に詳しい弁護士に相談します。交渉の順番が重要となります。

裁判まで進めると患者様の名前が公開されるほか多額の費用や時間の負担が発生します。その上、満足できる結果が出る保証はありません。現実的には、修正手術で解決できる範囲であれば、示談で納得のいく結果を出すことが患者様にとって負担が最小限で済む方法です。

後遺症が発生して長期治療が見込まれる場合は、目先の返金だけで安易に満足せず、他の医療機関で診断書をもらい、その後も治療費の負担が続くことを視野に入れて交渉をした方がよいです。

当院は、当院での修正手術の費用のために前医に返金をしてもらうよう患者様に促すようなことはしておりません。当院は依頼された手術を責任を持って果たすだけであり、いついくらの請求をして支払いを受けるかは患者様と前医の問題となります。弁護士のご紹介も行なっておりません。

当院では勝手な手術をされてしまった方々の修正手術をこれまで沢山お受け入れしてきました。泣き寝入りをする方やクレームを言わない方が多いため記事にまとめました。参考になさってください。

医療法人社団S&T医会 

銀座すみれの花クリニック

【専門医解説】鼻の拘縮とは?

「拘縮鼻の修正」として派手に変化させた症例を見たとき拘縮鼻の定義を疑う

「鼻の拘縮を修正した!」「拘縮鼻がこんなにきれいになりました!」という症例をたまに見かけます。拘縮についてきちんと学んでいない医師の発信も見かけます。拘縮とは一体どのような状態を指すのか、長年多くの鼻の修正手術を手がけた経験から解説します。

「拘縮」とは何か

鼻の手術後には、ほぼ必ず創傷治癒の過程で瘢痕ができます。しかし、

瘢痕があること=拘縮ではありません。

拘縮とは、形成された瘢痕組織が収縮することによって、周囲の皮膚・軟部組織や鼻の構造が引っ張られ、鼻の形態そのものが短縮・変形している状態です。

鼻形成術後の contracted nose に関する系統的レビューでも、基礎病態は「軟骨性支持組織の障害」と「それを覆う瘢痕組織の収縮」の組み合わせとして説明されています。典型的には、

  • 鼻が以前より短くなる
  • 鼻尖が頭側へ引き上げられる(upturned / overrotated tip)
  • 鼻孔が正面から目立つ
  • 鼻柱が後退する
  • 鼻尖・鼻翼などが瘢痕によって引きつれる
  • 皮膚・軟部組織の伸展性が低下する

といった変化を呈します。

「硬い鼻」と「拘縮鼻」は別

例えば鼻中隔延長術後には、移植軟骨によって鼻尖の可動性が低下し、「鼻が硬くなった」と感じることがあります。また、複数回手術をすれば瘢痕も増えます。硬くて手術をするのが大変になります。

しかし、それだけで拘縮鼻という診断にはなりません。

構造物による硬さ
と
瘢痕収縮によって鼻が短縮・変形する拘縮
は区別する必要があります。

実際、重度の拘縮鼻( contracted nose) では、瘢痕によって皮膚・軟部組織が伸びなくなっているため、手術では、瘢痕解除、解除によって皮膚軟部組織を伸展させ、下外側鼻軟骨(鼻翼軟骨)の自由度を回復させる、そして必要に応じて鼻の支持構造の再建まで行います。

感染した鼻=拘縮ではない

感染は拘縮の重要な原因の一つではあります。

感染や異物反応→炎症→強い線維化→瘢痕収縮、という経過によって拘縮鼻になることがあります。シリコンなどの異物による慢性炎症によっても拘縮は発生します。

しかし、

「感染したことがある」→「現在の鼻は拘縮鼻である」

とはなりません。

感染後であっても、鼻の長さや鼻尖位置、皮膚の伸展性などが保たれていれば、少なくとも外見だけから「拘縮鼻」と断定することはできません。

早期に感染に対する治療を行えば、瘢痕ができても拘縮に至らないことがあります。

診断について

形成外科医でも「拘縮」という正確な定義を知らなければ拘縮鼻の診断はできません。皮膚、軟骨を含む軟部組織の自由度の欠落、組織そのものの引きつれなどを、総合的に判断して拘縮の有無を診断します。

術後感染の拘縮(拘縮鼻)、術後瘢痕、鼻中隔延長による硬さ、手術にともなう変形、これらは全て異なります。

当院の拘縮の修正症例(モニター症例のみ)

症例1:他院にて感染したことによる拘縮(ブログ公開予定)

顔の再建手術前(左)と手術後6か月(右)の比較写真

症例2:他院にて感染したことによる拘縮 

アメブロ記事

術前と術後5ヶ月の顔の比較写真

症例3:他院術後感染で鼻尖外側から鼻孔内に瘻孔(穴)ができ、拘縮によって鼻尖・鼻柱が著しく偏位した

当院アメブロ記事

美容施術前の女性の顔写真(正面)

症例4:変形鼻(感染ではない慢性炎症による拘縮)

シリコンプロテーゼが拘縮により偏位したためシリコンプロテーゼを抜去。変形を起こした鼻 

当院アメブロ記事

手術前面の写真と手術後3カ月の写真の比較。

症例5:他院術後感染後の拘縮(右は拘縮を起こしている画像です)
Youtube動画「異物感染」

症例6:他院にて7回の手術と3回の感染による拘縮

当院アメブロ記事

施術前の顔の側面写真

症例7 韓国で寄贈肋軟骨による鼻中隔延長を受けたあとMRSA感染を起こし拘縮したケース

術前と術後3年6ヶ月の顔の比較写真

(ブログ公開予定) 

拘縮鼻の本質的な治療

① 原因の除去(シリコンなど異物を除去する)
② 拘縮した瘢痕・癒着の解除
③ 皮膚・軟部組織の可動性を回復
④ 変形した下外側鼻軟骨(鼻翼軟骨)などの自由度の回復
⑤ 必要に応じて鼻の支持構造を再建(鼻中隔延長術・再延長術・ストラット再建術・鼻孔縁下降術など)
⑥ 過度に皮膚を伸展させない(鼻を高くしない)

重症例ではその再建材料として肋軟骨などの自家組織が必要になりますが、高くてきれいな鼻というのは一旦諦め、安心して生活できる鼻を目指すことが大切です。

高く伸ばし過ぎる合併症には以下のようなものがあります。

  • 皮膚そのものが萎縮していく
  • 鼻尖が平坦化していく
  • 鼻唇角が広がる(アップノーズ)
  • 鼻尖鼻翼境界(鼻翼溝)が陥没する
  • 鼻尖鼻柱が偏位する
  • 左右非対称になる    など

終わりに

拘縮を起こした鼻を修正するのは本当に難しいことです。皮膚が容易に伸びませんので、鼻を高くすることを望む場合、皮膚や軟骨に相当な負荷をかけるためリスクが高くなります。このことについて一般の方もよく知っていただき、特に本当に拘縮を起こしている方が「拘縮していても普通の鼻中隔延長ができる」と誤解することのないよう、SNSで沢山流れている症例を見る際の参考にしていただければ幸いです。ネットで「拘縮鼻の修正」として派手に変化させた結果を見たときは、そのクリニックの拘縮鼻の定義を疑ってください。

執筆

銀座すみれの花クリニック
院長 横山才也
日本専門医機構認定形成外科専門医
日本美容外科学会(JSAPS)認定美容外科専門医

修正 修正手術 全摘 再建 形成外科 感染 手術 整形手術 横山才也 真皮脂肪移植 美容外科 銀座すみれの花クリニック 鼻の修正手術 鼻の整形 鼻中隔延長 鼻尖 鼻整形