「拘縮鼻の修正」として派手に変化させた症例を見たとき拘縮鼻の定義を疑う
「鼻の拘縮を修正した!」「拘縮鼻がこんなにきれいになりました!」という症例をたまに見かけます。拘縮についてきちんと学んでいない医師の発信も見かけます。拘縮とは一体どのような状態を指すのか、長年多くの鼻の修正手術を手がけた専門医である横山才也が解説します。
「拘縮」とは何か
鼻の手術後には、ほぼ必ず創傷治癒の過程で瘢痕ができます。しかし、
瘢痕があること=拘縮ではありません。
拘縮とは、形成された瘢痕組織が収縮することによって、周囲の皮膚・軟部組織や鼻の構造が引っ張られ、鼻の形態そのものが短縮・変形している状態です。
鼻形成術後の contracted nose に関する系統的レビューでも、基礎病態は「軟骨性支持組織の障害」と「それを覆う瘢痕組織の収縮」の組み合わせとして説明されています。典型的には、
- 鼻が以前より短くなる
- 鼻尖が頭側へ引き上げられる(upturned / overrotated tip)
- 鼻孔が正面から目立つ
- 鼻柱が後退する
- 鼻尖・鼻翼などが瘢痕によって引きつれる
- 皮膚・軟部組織の伸展性が低下する
といった変化を呈します。
「硬い鼻」と「拘縮鼻」は別
例えば鼻中隔延長術後には、移植軟骨によって鼻尖の可動性が低下し、「鼻が硬くなった」と感じることがあります。また、複数回手術をすれば瘢痕も増えます。硬くて手術をするのが大変になります。
しかし、それだけで拘縮鼻という診断にはなりません。
構造物による硬さ
と
瘢痕収縮によって鼻が短縮・変形する拘縮
は区別する必要があります。
実際、重度の拘縮鼻( contracted nose) では、瘢痕によって皮膚・軟部組織が伸びなくなっているため、手術では、瘢痕解除、解除によって皮膚軟部組織を伸展させ、下外側鼻軟骨(鼻翼軟骨)の自由度を回復させる、そして必要に応じて鼻の支持構造の再建まで行います。
感染した鼻=拘縮ではない
感染は拘縮の重要な原因の一つではあります。
感染や異物反応→炎症→強い線維化→瘢痕収縮、という経過によって拘縮鼻になることがあります。シリコンなどの異物による慢性炎症によっても拘縮は発生します。
しかし、
「感染したことがある」→「現在の鼻は拘縮鼻である」
とはなりません。
感染後であっても、鼻の長さや鼻尖位置、皮膚の伸展性などが保たれていれば、少なくとも外見だけから「拘縮鼻」と断定することはできません。
早期に感染に対する治療を行えば、瘢痕ができても拘縮に至らないことがあります。
診断について
形成外科医でも「拘縮」という正確な定義を知らなければ拘縮鼻の診断はできません。皮膚、軟骨を含む軟部組織の自由度の欠落、組織そのものの引きつれなどを、総合的に判断して拘縮の有無を診断します。
術後感染の拘縮(拘縮鼻)、術後瘢痕、鼻中隔延長による硬さ、手術にともなう変形、これらは全て異なります。
当院の拘縮の修正症例(ブログでは各方向からの画像を公開しています)
症例1:他院にて感染したことによる拘縮

症例2:他院にて感染したことによる拘縮

症例3:他院術後感染で鼻尖外側から鼻孔内に瘻孔(穴)ができ、拘縮によって鼻尖・鼻柱が著しく偏位した

拘縮鼻の本質的な治療
① 原因の除去(シリコンなど異物を除去する)
② 拘縮した瘢痕・癒着の解除
③ 皮膚・軟部組織の可動性を回復
④ 変形した下外側鼻軟骨(鼻翼軟骨)などの自由度の回復
⑤ 必要に応じて鼻の支持構造を再建(鼻中隔延長術・再延長術・ストラット再建術・鼻孔縁下降術など)
⑥ 過度に皮膚を伸展させない(鼻を高くしない)
重症例ではその再建材料として肋軟骨などの自家組織が必要になりますが、高くてきれいな鼻というのは一旦諦め、安心して生活できる鼻を目指すことが大切です。
高く伸ばし過ぎる合併症として、皮膚そのものが萎縮していく、鼻尖が平坦化していく、鼻唇角が広がる(アップノーズ)、鼻尖鼻翼境界(鼻翼溝)が陥没する、鼻尖鼻柱が偏位する、左右非対称になる、などがあります。
終わりに
拘縮を起こした鼻を修正するのは本当に難しいことです。皮膚が容易に伸びませんので、鼻を高くすることを望む場合、皮膚や軟骨に相当な負荷をかけるためリスクが高くなります。このことについて一般の方もよく知っていただき、特に本当に拘縮を起こしている方が「拘縮していても普通の鼻中隔延長ができる」と誤解することのないよう、SNSで沢山流れている症例を見る際の参考にしていただければ幸いです。ネットで「拘縮鼻の修正」として派手に変化させた結果を見たときは、そのクリニックの拘縮鼻の定義を疑ってください。
執筆
銀座すみれの花クリニック
医学博士 院長 横山才也
日本形成外科学会認定形成外科専門医
日本美容外科学会認定(JSAPS)美容外科専門医

